Excelで出来る業務改善

ちょっとした工夫・知識で、効率アップが図れるExcel利用方法をお伝えしていきます。

Excelの書き方を統一しよう!(第6回)数式セルの「目的」を考える

書き方の工夫で変わるExcel資料作りの作業効率

第6回は、数式セルの「目的」を考える必要性について説明します。前回同様、実務現場での「あるある」的な実例を加えて補足説明しながら紹介していきます。

  • 出荷データが数式になっており、他資料から毎日更新される資料のデータ比較
  • 客先提出済の見積金額について、社内確認のため簡易の別資料を作成する
  • 出荷データのフォーマットを応用し、仕入データの資料を作成する

では、細かく見ていきましょう。

【テーマ6】数式セルの「目的」を考える

総務省より公表されたExcel作成に関するガイドライン統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルール)に、以下の記載があります。

数式を使⽤してセルの値を⼊⼒している場合、並べ替え等を⾏った場合、正確な値が表⽰されなくなる可能性がある。
そのため、セルのデータは値のみとすること。

ガイドラインによると、数式を無くし、セルにはデータ値のみにするよう促していますが、数式を無くし資料を作成すると、ケースバイケースでメリット、デメリットが発生します。具体例を見ながら確認していきましょう。

 

複数の商品の出荷数を会社別にまとめた表データです。商品別の出荷数が記載され、会社別の出荷合計数と平均出荷数を求めています。

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複数商品の会社別合計出荷数、平均出荷数

セルをデータ値のみにする(数式を無くす)メリットを紹介します。例えばA社~C社の出荷データが数式になっており、他資料により毎日更新される場合、つまり常に最新の出荷合計が表データに反映される場合は、先月、先々月とのデータ比較を行うことはできません。比較を行いたい時点でのデータを退避しておく手間が発生します。

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常に最新の出荷データの場合

他の例を考えてみます。客先提出用の見積書の金額について、社内で確認を取るため、自身でメモ程度に資料を作成したとします。数式内で使用されている項目自体に意味がある場合は、他の資料が更新されたタイミングで合わせて変動してしまうため、データが変わってしまう可能性があります。明細項目を別に用意し、セルを数式ではなくデータ値のみにすることで、他の項目が仮に変更となった場合でも金額に差異が発生することはありません。

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見積金額を数式のままにした場合とデータ値に修正した場合

 

次に、セルをデータ値のみにする(数式を無くす)デメリットを紹介します。再び、複数の商品の出荷数を会社別にまとめた表データについて考えます。同じような形式で仕入数の表データを作成する必要が生じた際、コピーして貼り付けても書式のみしか使いまわせないため、計算式を入力し直す手間が発生します。

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類似資料作成時のセルがデータ値のみの場合、セルに数式ありの場合

ここまでの例で、セルをデータ値のみにする(数式を無くす)メリット、デメリットを紹介しました。

  • 比較するためデータを退避する手間を省く。
  • 意味がある数字や項目は他にデータに左右されず、変更されない。
  • 元の表データを更新する必要が生じた際、計算式を再入力する手間が発生する。
  • 似たような表データ作成時に、計算式を再入力する手間が発生する。

データをまとめ、集計する資料は、過程として数式を利用したとしても、その時点でのデータに意味を持たす必要が発生した場合はセルをデータ値のみにする(数式を無くす)メリットが多くあります。反対に、毎週毎月等データを頻繁に更新し、常に最新であるべき資料や、類似資料を作成する必要がある資料は、セルをデータ値のみにする(数式を無くす)とデメリットが多く、セルの数式はそのまま残しておいたほうが計算式を再入力する手間が省けます。

 


 

ガイドラインを作成してみませんか?>

自身の業務について振り返ってみてください。

  • 暗黙的なExcel作成のルールはありませんか?
  • そのようなルールを作成した経緯・背景は何だったでしょう?

ルールやガイドラインは、作成していくうえでの不便や不都合など何かしらの状況発生を通して作成・蓄積されていくことが多いものです。

だとすれば、あらかじめExcel作成ガイドラインが用意されていれば、不便や不都合の発生を予防することができるかもしれません。冒頭で紹介した総務省ガイドラインをはじめ、他組織が策定したルール集やガイドラインを自身または自組織のガイドライン見直しのきっかけにも利用し、より良い内容に改善し続けていくことで、少しずつ身の回りの業務から不便がなくなっていくかもしれませんね。